久保萌菜 Kubo Moena
2009年7月10日(金)

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小規模店舗がホワイトキューブのような空間に改修された「大平荘スタジオ」。向かいは高架下を覆うフェンス、両脇は営業中のスナック。そんなスタジオと大学を行き来しながら、制作活動を続けている久保萌菜さんに、黄金町での活動についてお話を伺いました。
 
インタビュアー、編集:平野真弓 写真:柳本順也 / 2009.07.10


_事務局が日ノ出町にあるからかもしれませんが、大平荘がある黄金町駅近くの小路地は、昨年のバザールが動き出した当初、事務局にとっては未知の場所でした。横浜美術館のサテライトギャラリーがオープンした後も、女性1人のお留守番を心配に思った記憶があります。

面接の日まで、私はここがこういう場所だということを知らなくて、とてもびっくりしました。
はじめのころは通りがかりの方がのぞいて行かれることが多くて、やっぱりとても怖かったです。びくびくしながら制作していました。
カウンターを入口近くに置いたのも、ロールスクリーンを取りつけたのも制作中全てが見えないようにするためでした。
 
 
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_施設利用の応募の前に、黄金町に来たことはありましたか?
 
学校で今もお世話になっている安齊重男さんにバザールのおはなしを聞いて、興味をもちました。
一度だけ、12月の大感謝祭のときに来ました。とても気にいって、その日の帰り道にプランをいろいろ考え、夜に申請書を書きました。
大平荘を見たときに絶対ここだ!と思ったんです。
 
_この界隈を歩いて、何か違うなあという感覚はなかったですか?
 
外国みたいだなという印象を受けました。自分が今まで見た街とは違いました。そこもすごくいいなと思ったんです。閉鎖されていたお店とかを見ても、私は何のお店なのかわからなかったので、店の名前が怪しいなと思うくらいでした。
あと大岡川のある景色にとても惹かれました。
私は横浜近辺に詳しくなくて、横浜の方から心配されたこともありましたが、この街で活動を始めてから、街の方々に色々と教えてもらいました。おとなりのヤグチレジデンスの関本さんが、気にかけて下さいます。始めは本当にひとりで心細かったので、とても助かりました。
 
 
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_入居が始まった頃は、みんなで集まる機会も限られていたし、事務局もマップを作るところまで手が回っていませんでした。
 
そうですね。はじめの入居者連絡会議があるまでは、おとなりの関本さん以外は、どんな方がいらっしゃるのかわからなくて、どきどきしました。やっと街の方とも入居者の方とも慣れたころに4月が来てしまったので、もうちょっとがんばりたいなと思って、4月からの中期利用にも応募しました。
ここは、学校のアトリエの良さとは全く違う良さがあります。様々な分野のアーティストがいるし、街の方とおはなししたり、見る側の方からはなしを聞けるのは、なかなかない機会なので、「ああ、そうやってみえるんだ」とか自分ひとりでは気づかなかった見え方を発見できたり、すごく面白くて、楽しくて、それでここに居着いちゃっているんです。
 
 
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_大学と黄金町の両立は大変でしょうね。実際、現在入居中のアーティストはこの街を拠点に絞って活動している人がほとんどです。
 
そうですね。本当はそうしたいんですけど、まだやるべきことがのこっているので。実は学校に身が入らなくなってしまっています。
 
_黄金町のまちづくりに関わるスタッフとして、喜んでいいのかどうか複雑な気持ちです。大平荘で続けている「こがねいろのかけら」のワークショップは、ここに来る前に始められたんですか?
 
いえ、ここに来て始めました。1月からの滞在制作期間に100人くらいの方が来てくれて、結構な量ができました。
色紙をはさみで切って「かけら」を作ってもらうのですが、本当につくる方の性格がでます。毎回とても楽しませてもらっています。
桜まつりの季節は桜をテーマにかけらを作ってもらったんですけど、「だからといって桜の正確なかたちじゃなくていいよ」っていったら、みんな本当に自由に作ってくれて、さまざまな形が出来ました。
オーガンジーという布を2枚縫い合わせて、ポケットみたいになっているのですが、各自のかけらを好きなところに入れてもらって一枚の作品になります。ここにあるのは全てまちの方に作っていただいたものです。
 
 
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_私も大平荘でかけら作りをしたのですが、こどもの頃を思い出しました。昔は何も考えずに切れたのに、今は色々と考えてしまう。
 
突然色紙を前にしてなにか切れなんていわれたって考えてしまいますよね。おはなししながらきることで、その緊張を解けたらいいなとおもっています。
私はできるだけ考えないで、とにかくたくさん切ります。後で気にいった形をピックアップして、絵の一部にします。私はこの作業をドローイングと呼んでいます。
あまり考えないで切っていくので手では描けないおもしろい形や、誰かと一緒におはなしをする中で偶然生まれる形だとか、色紙を折ってからはさみで切っていくと、どんな形になるかわからなくて、広げると面白い形が出来ていたりするのが好きで、このプロセスを選んでいます。
出来上がったかけらをあつめて、油彩をつかってひとつの絵に仕上げていきます。
入居してすぐ「黄金町にきたらすることリスト」をつくりました。
・さんぽをする
・はっけんする(写真を撮る)
・かけらをつくる
・絵を描く
この辺をさんぽして、何か発見したら写真にとって持って帰ってくる。毎日1枚撮っているんですけど、今では200枚くらいになりました。
最近は、自転車で遠出さんぽもしています。地図は持たないで出かけて、少し迷子になりながら、なんとか帰って来ます。
 
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_お話を聞いているとリストをつくるような計画的な面と、偶然性を大切に制作している面があるんですね。
 
たしかにそうですね。自分でも気づきませんでした。今はそのバランスがとてもちょうどいいみたいです。
 
_横浜美術館がこの大平荘を使っていたときとは、ずいぶん雰囲気が変わりましたね。あのときは「展示空間」、つまり見せる空間だったのが、今はものを作る空間という感じがします。
 
私にとって一番ベストなのは、展示をしている空間もあって、制作をしている空間もあって、誰でもが気軽に入れる場所です。
制作過程は、作家にとっても見せる機会があまりないし、見る方にとっても見る機会があまりない。
私の作品は制作過程のなかではさみを使ったドローイングがあるのでその作業を見てもらえたり、一緒につくってもらえることはとても意味があると感じています。
 
 
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_大平荘でのこれからのプランは?
 
かけらのドローイング、ワークショップはひきつづき行います。
あとはその日の気分で大平荘にあるものを最大限に使って新しい遊びを考えだして遊んだりつくったりするゆるーいワークショップをやってみたいな、と考えています。以前大平荘の道具をたくさん並べてながいながいドミノをつくってあそんだことがきっかけです。
あとは大平荘の半分にすてきなアーティストを1ヶ月限定で招待して一緒に滞在制作をして展示をしよう。という企画をたてています。
 
_ありがとうございました。