潘 逸舟 Ishu Han
2015年12月08日(火)

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2015年12月5日(金)より、高架下スタジオSite-Aギャラリーにて個展を開催中の潘逸舟さんは、中国・上海生まれの今注目の若手アーティストです。 

展覧会設営のために、昼夜作業を行う高架下Site-Aギャラリーの会場で、今回の展覧会について話をうかがいました。(2015.12.02)


 
_潘さんが作品をつくるようになったきっかけを教えて下さい。


潘:元々は父親が絵を描いていて、その影響で小さい頃から絵を描いていました。高校も美術コースに進み、さらに美術部に所属していました。午前中だけは勉強して、午後は昼ご飯を食べた後、だいたい18時くらいまでデッサンや油絵などを描いたりして、ひたすら美術の時間(笑)。
その時期にACAC(国際芸術センター青森)というところでボランティアもしていました。

 
 
_今は映像作品を主に制作されていると聞きました。映像という表現方法に出会ったのはいつのことですか?


潘:僕が高校生の頃、当時はまだ珍しかったハンディカムを父親が持っていて、それを借りて撮りだしたのがきっかけでした。自分のパフォーマンスのようすを記録した作品《My Star》が最初の映像作品です。自分の日用品をカバンに詰めて、歩きながらそれらをひとつずつ地面に置いていく。カバンの中身がなくなってしまうと、次は着ていた服を脱いで置いていく。最後裸になったときに、星の輪郭が残っているという作品でした。


作品《My Star》のポートフォリオはこちらから
 
 
_それが高校生の時ですか!驚きです。その作品はそのときどこかで発表しましたか?


潘:当時、弘前市内(青森県)の農村の川の近くにあったゲートボール場を2日間だけ借りて、自分で個展を開きました。それがはじめての展覧会でした。でも全然人が来なくて(笑)。2人くらい来たかな。『13億の星』というタイトルの展覧会で、自分と、自分と「星」との関係をテーマにした作品をいくつかつくった。当時の私にとって「星」というのは、「中国の国旗」「国の象徴」という意味がありました。
 
 
_これまでの作品について教えて下さい。


潘:僕の作品は、人間が持っている社会的なアイデンティティをテーマにしています。自分自身のアイデンティティの問題や、人がアイデンティティを持つということにどういう意味があるのか、個人と社会の関係をテーマに制作してきました。
『13億の星』で言えば「星」や「丸」という象徴と、それが個人とどう関係しているのか、あるいはそれを所有するとはどういうことか。他にも「中国人」や「日本人」といった一人の人間が社会の中に属したり参加したりするということはどういうことなのか。大きい社会の象徴と、一人の個人がどういう風に関係しているのかということを考えています。

 
 
_今回の展覧会はどんな内容のものにしようと考えていますか?


潘:今回の展覧会では、今年の前半に約半年間、ニューヨークに行って帰って来て、感じたことを素直に作品にしようと考えています。例えば「移民」、また「アジア」について考えることが多いです。
今日本あるいは東アジアに住んでいる状況と、近年私たちを取り巻く政治的なことについて考えながら制作した作品が多いです。
 
 
_今回の展覧会のタイトル「存在を支配するもの」に込められた思いや狙いを教えて下さい。


潘:このタイトルは今までの自分のアイデンティティをテーマにした作品とはすごく繋がっていて、「アイデンティティ」と「存在すること」に、どういう違いがあるのかに関心があります。「私はここに居る/存在している」っていうことと、「私はここに社会的にひとりの人間として存在している」っていうこと、そこにはどういう違いがあるのだろう。私は潘逸舟という一人の私であり、同時に私は中国人であり、またアーティストでもある。例えば海外に行く時に持つパスポートが、私が○○人であるということをその国に保証してもらうように、「中国人」とか「アーティスト」という「社会的一員として存在していること」と、でも「私はここに存在していること」の2つがつねにある気がしています。
 
 
_それは「自分で自分の存在を認識すること」と「社会が自分を認識すること」にも置き換えられる?


潘:いま「2つ」と言いましたが、実はそれらが切り離せるのかっていうのも僕はわからなくて。その2つを切り離してしまうと、「私が居る」ってことを証明できないのかもしれない。証明するというのは、客観的に自分を位置づける、あるいはある言語のなかに自分を置き換えるということ。自分を社会に認識してもらうためにはそこと切り離すことはできないと思うのです。そういったいろんな意味を含めてこのタイトルをつけました。
それらは同時に、近年の私たちをめぐる政治的状況に対する問いかけもあります。
 
 
_インタビューをご覧の方に一言お願いします。


潘:ありきたりな言葉ですが、見にきてくれたらうれしいです。
 
 
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プロフィール 

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潘 逸舟 (アーティスト) 1987年中国上海市生まれ。1997年から2006年まで青森県に住む。東京芸術大学美術研究科先端芸術表現大学院修了。現在東京在住。

2015年「隣り合う記憶」(iscp/ニューヨーク) 
2015年「In the wake」(ボストン美術館/アメリカ) 
2014年「アジアン・アナーキー・アライアンス」(開渡美術館/台湾) 
2013年「Study Country」(VCA School of Art /メルボルン) 
2013年「在地未来」(何香凝美術館 /中国) 
2012年「第16回 文化庁メディア芸術祭」(国立新美術館 /東京)




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潘 逸舟「存在を支配するもの」展 プレスリリース(PDF:503KB)はこちらから